【獣医師版・ドクターX】イギリスのフリーランス獣医師とは?

フリーランスの獣医師になって約半年、

たくさんの出会い、たくさんの発見、たくさんの挑戦、色々盛りだくさんです^^

フリーランスの医者といえば『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(ちょっと古い?)を思い浮かべる人も多いかと思いますが、

フリーランスの獣医師ってあまり馴染みのない言葉ですよね?

一体どんな世界なのか。。。今日は『フリーの獣医』について紹介します♪

 

フリーランスの獣医師って?

その名の通り、特定の病院に属さず、病院と自由に業務委託契約をして働く獣医師のことです。

イギリスではこの様な獣医師のことを一般的に『Locum(ローカム)』と言います。

動物病院に行って、『今日の担当はローカムの〇〇先生だよ』と言われた場合、常勤の先生ではなくフリーの先生が担当という意味です。

 

どんな働き方?仕事内容は?

働き方は十人十色

契約は1日単位から数ヶ月、または終了日が決まっていない継続型まで色々です。

一つの病院とできる限り長く契約し続ける獣医師もいれば、短期の仕事を好む獣医、複数の病院を掛け持ちする獣医、自分の家を持たず宿付きの動物病院を転々とする獣医、などなど働き方は人それぞれ。

宿付きだったり、ホテル代を出してくれる病院もたくさんあるので、ヨーロピアンのフリー獣医師の中には普段は自分の母国に住み、数ヶ月に一回イギリスに来て数週間〜数ヶ月間ホテルや病院の宿に泊まりガッツリ働くというスタイルを取っている獣医師も。

フリーランス獣医師の業務内容

フリーランス獣医師とひとまとめに言っても臨床全般をこなすフリーランス(←私はこれ!)から専門資格を持った専門医フリーランス獣医まで色々です。

臨床全般をこなすフリーランスの業務内容は勤務獣医師とほぼ一緒です。その日のシフトや病院によって、診察と手術をする日もあれば、手術だけ、診察だけする日もあります。病院によって色々。自信のない手術などがあれば事前に申告することも可能ですが、やはりオールラウンドに色々こなせた方が重宝されます。最低でも基本的な事は初日から一人でできる即戦力が求められます。

病院によって働く環境(特にコンピューターシステム!!)、やってくる動物の種類、手術・診察の件数などすごく差があるので、新しい病院に出向く時、いつもどんな病院なんだろうと不安を感じつつも「ワクワク・ドキドキ」です。

そして、フリーで働く獣医師の中には数少ないですが専門医フリーランスも存在します。今までフリーの外科医と画像診断医に何度か会いましたが、颯爽とやってきて、依頼された手術や画像診断を行い、担当医に引き継ぎし颯爽と帰っていく。『技術を極めるとこんな働き方もあるのか〜』といつも尊敬の眼差しで見ています^^

 

どんな時にフリーの獣医が必要とされるの?

臨床全般系の場合

臨床全般のフリー獣医師が必要とされるシチュエーションで多いのは。。。

  • 院長・勤務医の休暇カバー
  • 勤務医の産休カバー
  • 人手不足

イギリスの勤務医は平均年間21−28日の有給休暇(もっと多いところもありますが。。。)+ 3−5日の勉強休暇が与えられます。そして、有給休暇は基本的に完全消化です。院長先生が休暇で数週間病院を空けることも珍しくありません。『しっかり休暇を取ってリフレッシュすることも大切なこと!』『休みを取りなさい!』と昔働いていた病院院長に何度言われたことか^^

獣医師が複数働いている病院だと、毎月誰かが休暇を取っていたり、研修に行っていたり、誰かがいないということがしょっちゅう起こります。

もちろん病院の常勤スタッフだけで休暇中のスタッフの仕事をカバーすることも可能ですが、、、

獣医師の仕事は心身ともに重労働。

そんなことが頻繁に起こったり、長期間続くと残された常勤獣医師たちの精神的・肉体的負担はかなりのものです。心や身体を崩してしまう獣医師も少なくありません。そんな時に重宝されるのがフリーの獣医師。フリーの獣医師を雇うことにより、残された勤務医たちの負担をできる限り抑え、病院を通常通り運営することが可能になります。産休も同じく^^

また、イギリスでは現在経験のある獣医師の人手不足が深刻です。条件にあった勤務医がなかなか見つからないため、フリーの獣医師を継続的に雇い続け人手不足をカバーしている病院もたくさんあります。

 

専門医の場合

フリーの専門医の場合は、その人の専門技術が必要な時に病院に呼ばれます。通常なら二次診療病院に紹介しなければならないような症例も、フリーの専門医に来てもらうことで、全てのケアを一次診療の病院内で完結することが可能になります。

フリーの専門医たちは機材なども自分で持ち込むことが多く、病院が特殊な手術・診断をするための機材投資をすることなく専門的な治療を提供できるというメリットがあります。

飼い主さんも普段行き慣れた病院・先生たちの元で検査や治療を行うことを望むことが多く、そんな時にフリーの専門医が重宝されるのです。

病院に定期的に出向く契約をしている獣医師もいれば、必要に応じて不定期に病院と契約する獣医師もいます。

 

どんな病院で働くの?

これも色々^^

私自身、フリーになって以来5つの病院で働いたのですが、おじいちゃん先生が長年続けてきたレトロな病院から、最新設備の整った大きな病院、個人経営の病院からグループ病院まで、本当に色々です。

それぞれの病院に院長の思いが詰まっていて、そんな思いを大切にしながら働いています。

病院の規模、設備、コンピューターシステム、得意分野、使う薬・ワクチン・食事の種類などなど、一つとして同じ病院はなく、スタッフの名前など覚えることも多く、初日はいつも頭パンクしそうになります(笑)。

 

報酬ってどうなってるの?

報酬体制は?

臨床全般をこなす一般的なフリー獣医師は基本的に日給制。それプラス、契約時間を越えての残業は時給制です。

専門医獣医師はこの手術一件いくら、超音波診断一件いくらという風に医療行為単位制が多いです。

 

報酬はどうやって決めるの?

フリー獣医師の報酬、、、ズバリ自分で決めます。

もちろん、業界の相場というものはあるのですが、基本的に自己申告です。

まず自分で自分に値段を付けます。私は1日いくら、1時間いくら、と決めます。そして「私の日当はは〇〇です。◯月△日から□日間空いてます。」とエージェントや病院のマネージャーと交渉開始します。

この自分で自分の値段を付けるという行為、、、個人の性格にもよると思いますが、これが意外と難しい。自分を安売りしたくないけど、無責任に高額をつけるわけにもいかない、相場と照らし合わせて自分はどのくらいの価値があるのか、、、自分を客観的に観る『分析力』、自分を価値認める『承認力』、金額に見合った、いやそれ以上の仕事をするぞという『責任感』など色々なスキルが訓練されているように思います。

 

契約する病院はどうやって探すの?

契約先の病院を探す方法は主に3つ

  1. 自分で病院に直接連絡して探す
  2. 元同僚や同業者からの紹介
  3. エージェントと通して探す

イギリスにはフリーの獣医と病院をマッチングするエージェントがたくさんあります。フリーになりたてで人脈が少ない時などはありがたい存在です。

 

フリーランスのメリット・デメリット

メリット

色々な病院を見ることが出来る:

フリーの獣医師は特定の病院に属さないので、色々な病院で働き、違いを見て、感じ、そして学ぶことができます。病院によって運営の仕方、使用している薬、麻酔のプロトコール、手術の方式、治療方針など、本当に違いはたくさんあるので勉強になります。常に新しい知識・技術・経験が増えていっています。また、行く先々の病院で新たな出会いがあり、世界が広がります^^

自由な働き方:

働く時間・場所・報酬などを自分で管理・調整することが出来るので、自由度がかなり高いです。ライフスタイルに合わせて、働き方を臨機応変に調整することができます。

働けば働くほど収入が増える:

前述した通り、フリーの獣医師は日給制(残業時給制)または医療行為単位制なので、働けば働くほど収入は増えます。単純に日給・時給に換算すると勤務医よりは収入が多くなります。そうはいうものの、仕事が不定期だったり、休暇などを入れるとどっこいどっこいです。

獣医の仕事に集中できる:

フリーの獣医師は基本的に獣医の仕事だけ任され、スタッフ同士のいざこざなどに巻き込まれることもほとんどなく、獣医の仕事に集中できます。

 

デメリット

患者を継続して見ることができない:

私にとって、フリー獣医師の一番のデメリットはこれです😿 特定の病院に所属していないため、子犬・子猫の成長を見届けたり、長期治療が必要な子を最後まで診ることができなかったり、せっかく飼い主さんとすごく仲良くなってもすぐにお別れになってしまったり。。。

自分自身の契約終了後も患者が最高の治療が受けられるように診察に励み、常勤の獣医師・看護師とコミュニケーションをしっかりととりながら治療に励んでいますが、やはり寂しいものはあります。。。

不安定な収入と勤務体系:

働けば働くほど収入は増えますが、働かなければ収入ゼロ。オファーがなければ収入ゼロです。また、継続的な契約をしていても突然『新しい勤務医が見つかったから来週いっぱいで契約終了』と言われることもあります。なので、安定感を求める人、またお金の管理が苦手な人には向いてないかも。。。

必要支出の増加:

イギリスで勤務医の場合、獣医師会費、賠償責任保険料、学会・研修費用(病院によって年間£1000−2000くらい、中には高額な専門医になるための費用を援助してくれるところも。。。)、年金などはすべて病院がカバーしてくれます。ですが、フリーになるとそのような費用は全て自己負担になるので、必要支出は増加します。

一定の経験がなければスキルダウンしてしまう:

メリットの方で、フリーになると色々な病院に行き様々な経験ができ、たくさん学ぶことが出来ると書きましたが、一定の経験がなければ逆効果です。フリーの獣医師は即戦力として雇われているので、他の獣医師から手取り足取り色々教えてもらうことはできません。一定のスキル経験があれば、複雑な手術や診察も任せてもらえるし、他の獣医師とも意見交換しながら新たな発見があったり、新しいスキルを教えてもらったり、逆に教えたりすることができます。ですが、本当に基本的なことしかできない状態でフリーになってしまうと、簡単な業務しか任されず、スキルアップが難しくなります。

 

いかがでしたか?

フリーの獣医師と勤務獣医師、どちらもメリット・デメリットがあり、向き不向きもあります。

私の場合、勤務医として色々な経験を積めていたこと、結婚等の人生の節目があったこと、今後の獣医師としてのキャリアを考えた時フリーという選択肢も経験してみたかったこと、フリーになるなら今しかないと思い行動に移しました。今後勤務医に戻るか、フリーのまま続けるか、、、まだ答えは出ていませんが、今は毎日新しい経験、出会い、発見があり充実しています。

一つ言えることは、イギリスの獣医師は『臨床』という枠の中だけでも様々な働き方オプションがあるので、探し続ければ自分にあった働き方を見つけられるということ!『臨床』という枠に捉われなければ、選択肢はさらに広がります。選択肢や可能性がたくさんあるというのも『獣医』という仕事の魅力の一つです^^




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ABOUTこの記事をかいた人

香川県高松市出身 地元香川の高校卒業後、ニュージーランドでの語学留学・大学進学準備コースを経てオーストラリア・メルボルン大学獣医学部に進学。現在イギリスで臨床獣医師として働いています。