イギリス在住の皆さん!肺虫(lungworm)の予防はできてますか?

イギリスは最近暖かくなってきましたが、それでも夏があってないようなもの。日本のような猛烈な蒸し暑さはなく、暑い日でも扇風機があれば快適に過ごせてしまいます。

そんな気候のおかげで、イギリスでは日本でお馴染みの『蚊が媒介して起こる犬猫のフィラリア症』問題がありません。フィラリアの心配をしなくてもいいのは本当にラッキーですね。

ただ、その代わりと言ってはなんですが、イギリスではナメクジ・カタツムリ・カエルが媒介して起こる『肺虫(lungworm)』という感染症が存在します。

特に去年・今年は冬が穏やかだったこともあり、カタツムリやナメクジの数が増加しています。結果、肺虫(lungworm)のケースも増えてきています。

注意!!

他のヨーロッパ諸国でフィラリア症に感染する可能性は十分に考えられます。夏休暇中愛犬と一緒にヨーロッパ旅行をする予定の方は、フィラリア予防を忘れずに!

 

肺虫(lungworm)って?


英語では『ラングワーム(ウァーム)』と発音します。正式名称は『Angiostrongylus vasorum (アンギオストロンギルス ヴァゾルム)』という長〜い立派な名前がついております。

肺虫は線虫の一種で、肺虫の幼虫に感染したナメクジ・カタツムリ・カエルを犬が口にすることで、犬に感染し、場合によっては死に至らしめる怖い病気です。

『Crenosoma vulpis』と『Oslerus osleri』という寄生虫も、犬に感染する肺虫の一種なのですが、『Angiostrongylus vasorum』よりも発生率は少なく、犬へ健康被害も『Angiostrongylus vasorum』ほど深刻でないため、イギリスで犬の肺虫というと一般的に『Angiostrongylus vasorum』のことを指します。この記事でも、『Angiostrongylus vasorum』に内容を絞ってお話しさせていただきます。

 

ライフサイクル|感染経路は?


肺虫のライフサイクルは上記で述べたように、幼虫に感染したナメクジ・カタツムリ・カエルを犬が口にすることで始まります。

幼虫は犬の口→胃腸→リンパ節→肝臓・下大静脈→右心室・肺動脈と犬の体内を移動し、右心室・肺動脈の中で成虫となり卵を産みます。そしてその肺虫の卵は肺に移動し肺毛細血管床で孵化します。孵化した幼虫は肺の結合組織内を移動し炎症などの症状を引き起こします。感染した犬が咳をする際、肺に生息する幼虫が咳と一緒に吐き出され、飲み込まれ、そして幼虫が便と一緒に体外に排出されます。幼虫が混ざりこんだ便をナメクジやカタツムリが口にすることで、ナメクジ・カタツムリが肺虫の幼虫に感染し、新たなサイクルが始まります。

詳しくは動画をご覧ください ↓

肺虫のライフサイクルにおいて

  • キツネ『終宿主』(=有性生殖が行われる宿主・成体が寄生する宿主)
  • ナメクジカタツムリ『中間宿主』(=幼生期の発育を行い、幼生の寄生する宿主)
  • カエル『待機宿主』(=寄生虫のライフサイクルに必要はないが、終宿主と中間宿主の間を介在し終宿主への感染機会を増加させる役割をもつ)

という役割を担います。

ナメクジやカタツムリはこの時期どこにでもいるので、公園の草をクンクン、ムシャムシャしている時に、水たまりや池の水を飲んでいる時に、外に置きっぱなしにしていたおもちゃで遊んでいる時になど、様々な機会に犬の口に入ってしまう可能性があるので油断大敵です!

 

どのくらい流行ってるの?


イギリス北部に比べると、イギリス南部の方が症例数がグッとあがります。ですが、イギリス全国的に症例数が年々増えている傾向にあります。

英国ブリストル大学の研究報告によると、肺虫に感染しているキツネの発生率が、2008年には7.3%だったのに対し、2015年には18.3%まで増えているとのこと。イギリス南東部では50%以上のキツネが肺虫に感染していると報告されています。感染しているキツネ(終宿主)が増加しているということは、感染しているナメクジ・カタツムリ(中間宿主)も増えていると考えられます。つまり、犬が肺虫に感染するリスクも増加しているということになります。

Bayer(バイエル薬品)がリアルタイムで肺虫の発生状況をホームページ上でアップデートしているので、自分の住んでいる地域の状況を確認したい方は是非ここにアクセスを→ 『lungworm real-time map

このリアルタイム速報は獣医師による申告制なので、実際の症例はもっと多いと考えられます。

ちなみに私の勤務先の病院でも今年に入って2件確定診断されました。

 

肺虫(lungworm)の症状は?


肺虫の一番厄介なところは、症状が幅広く、重度から軽度まで多岐に渡ること。そのため、発見が遅れることも珍しくありません。よくある症状は以下の通りです

呼吸器症状

  • 息切れ

 

血液凝固障害

  • 小さな傷口なのに出血が止まらない
  • 鼻血
  • 目の充血・目が真っ赤になる
  • 貧血

 

その他の体調不良

  • 体重減少
  • 食欲がない
  • 嘔吐・下痢
  • なんとなく元気がない
  • 疲れやすい
  • 風邪っぽい
  • 痙攣

血液凝固障害や重度の呼吸器症状が出た場合は特に深刻で、最悪の場合死に至ることもます。

 

検査方法は?


肺虫の検査は簡単な血液検査・検便検査で可能です。
最近では15分ほどで判定可能な血液検査キットも普及しているので、気になる方・心配な方はぜひ最寄りの動物病院に足を運び検査について問い合わせてみてください。

 

治療法は?予防は?


肺虫の治療は一般的に飲み薬(Panacur, milbemax, NexGard Spectra等)とスポットオンタイプ(Advocate)を使用して行います。ほとんどの場合は大事に至らないのですが、発見が遅れると死に至るケースもあるので、予防第一です!!

予防は月に一度、予防薬を投与・使用することで簡単に可能です。その子のライフスタイルや薬との相性を見て『飲み薬タイプ(Milbemax, NexGard Spectra等)』か『スポットオンタイプ(Advocate)』を選びます。詳しくは獣医師に相談を!

 ペットショップ・スーパー・ドラッグストアで購入できる寄生虫駆除薬は肺虫に効果はありませんので、必ず動物病院からの処方薬を使用してください

 

猫も肺虫に感染するの?


ちなみに、猫にも肺虫症はあります。主に『Aelurostrongylus abstrusus』という肺虫が原因で発症します。猫の場合、肺虫に感染したナメクジやカタツムリを食べた鳥やネズミなどを食べることで感染すると言われています。愛猫が獲物を捕るのが得意であったり、屋外アクセスのある場合はしっかりと予防をしてあげましょう。猫の場合投薬は難しかったりするので、月一のスポットオン(Advocate等)が予防薬としてオススメです。猫の肺虫症についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事(英語)をどうぞ!

繰り返しになりますが、肺虫は予防・早期治療をすると大事に至ることはほとんどありません。愛犬・愛猫を守るため、しっかりと予防をしてあげましょう!!

 

 参考文献・サイト





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ABOUTこの記事をかいた人

香川県高松市出身 地元香川の高校卒業後、ニュージーランドでの語学留学・大学進学準備コースを経てオーストラリア・メルボルン大学獣医学部に進学。現在イギリスで臨床獣医師として働いています。