マイクロチップって本当に役に立つの?

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今日はマイクロチップについて。前回、イギリスで犬のマイクロチップ装着が義務化されるというお話をしましたが、マイクロチップって何?実際役に立つの?安全なの?どうなの?どうなの???って思っている方も多いかと。

マイクロチップとは?

マイクロチップは直径1.3-2.0㎜、長さ8.4-12㎜ほどの円筒型電子標識器具で、表面は生体適合ガラスでコーティングされています。各チップには15桁の個体認識番号が登録されており、その個体認識番号に飼い主の情報を登録します。
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どうやって個体識別するの?

マイクロチップを装着している動物に専用のリーダー(読取器)を当てると15桁の個体認識番号がリーダーの画面に表示されます。その番号とデータベースに登録された情報と照合することで個体識別・飼い主照会ができるという仕組みです。

どうやって装着するの?

専用の注射器を使って皮下注射をするような要領で埋め込みます。通常、麻酔や鎮静は必要ありません。生後2−4週間頃から埋め込みが出来るという意見もあるようですが、その時期の犬猫は離乳もしていないですし、身体も小さいので、生後6週以降の埋め込みをお勧めします。

痛くないの?

マイクロチップの針は通常の注射針よりどうしても太いものになってしまうので、「痛そう」「かわいそう」と思う方も多いかと。確かに針は太いですが、針の切れ味は抜群なので装着はあっという間です。中には悲鳴をあげちゃう子もいますが、おやつなどで気をそらしている間に「チクッ!」っという感じで装着完了することが多いです。また、最近はチップの小型化・軽量化が進んできているので、装着時の痛み、動物へ負担はかなり改善されています。どうしても痛みが心配な場合や、痛がりの子は、何らかの手術で麻酔を受けている際にマイクロチップを埋め込んでもらうというのも一つの方法です。

どんな時に役に立つの?

無責任な飼い主や危険な犬対策、盗難や闇取り引き対策に役に立つと言われているマイクロチップですが、飼い主さん目線での一番のメリットはやはり、自分のペットが迷子になった時、事故や災害に巻き込まれた時でしょう。イギリスはリード無しで散歩している犬や、自由気ままに屋外ライフを楽しむ飼い猫が多いお国柄。結果、迷い犬や迷い猫が結構頻繁に保護されます。日本の場合は、災害などが心配ですよね。離れ離れになった理由がどうあれマイクロチップをしていると身元確認が簡単に行えるので、ペットが飼い主さんと再会できる確率がグンと上がります。

その他のマイナーな使い道として、ペットドアや給餌器などのガジェットととの連携でしょうか。例えば、マイクロチップセンサー付きのペットドアはマイクロチップまたは専用のタグに反応してドアが開閉するようになっています。自分のペット以外の動物が家を出入りすることを防ぐ効果があり、イギリスの多くの家庭で導入されています。また最近では、マイクロチップセンサーの付いたSureFeedというハイテク給餌器も登場しました。定価£99.99とお高いですが、多頭飼いの家庭や、小さなお子さんの居る家庭にはいいかもしれませんね。

本当に役に立つの?

日本ではマイクロチップの普及率・認知度ともにまだまだ低く、マイクロチップの効果に疑問も持っている飼い主さんも多いと思います。ただ、間違いなく言えることはマイクロチップほどペットの身分証明に長けたデバイスは他にありません。特に震災などの非常事態に見舞われた際、ペットがいつもと違う行動をとる可能性、首輪や名札が外れてしまう可能性、外見が変化してしまう可能性、その他にも普段は考えられないようなことが起こる可能性があります。そんな時、世界で唯一の番号を持って身分を証明できるマイクロチップは飼い主さんとペットを結びつける大切な絆となります。まだまだ一般的に普及率・認知度が低いとはいえ、獣医関係者や動物保護団体関係者の間での認知度はすでにかなり上がっている印象を受けます。なので、万が一に備えてのマイクロチップ、決して無駄ではないと思います。
マイクロチップの普及度も認知度も高いイギリスでは、迷い犬・猫を保護した場合、まずはマイクロチップの有無を確認するため最寄りの動物病院または保護施設へ連れていくというのが自然な流れとなっています。そして、ほぼ100%の動物病院・保護施設にリーダーが常備されているので、マイクロチップをしている子の身元確認は本当にあっという間に完了します。動物病院で働いていると離れ離れになった飼い主とペットの感動の再会を目にする事も多く、その度、マイクロチップの効果・大切さを身にしみて感じます。

マイクロチップって安全なの?

やはり気になりますよね。現在勤務している動物病院では少なくとも1日数頭、多い日には1日10頭を超える動物たちにマイクロチップの装着をしています。私個人では過去5年間で1000頭以上の動物にマイクロチップを装着してきましたが、今現在マイクロチップによる副作用の経験はありません。WSAVA(世界小動物獣医学会)によると、イギリス最大のマイクロチップデータバンクPetlogに登録されている370万頭の動物の中、腫瘍が疑われる副作用報告は過去10年の間2件あったと記されています。そのうち1件は偶発的な腫瘍で、マイクロチップ装着との因果関係は薄いとのこと。マイクロチップは100%安全というわけではありませんが、極めて安全性の高いものと言えます。マイクロチップの恩恵を受ける可能性とマイクロチップから副作用を受ける可能性…私は恩恵を受ける可能性の方が圧倒的に高いと思います。ちなみに我が家の家猫ちゃんにもマイクロチップ入ってます。




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ABOUTこの記事をかいた人

香川県高松市出身 地元香川の高校卒業後、ニュージーランドでの語学留学・大学進学準備コースを経てオーストラリア・メルボルン大学獣医学部に進学。現在イギリスで臨床獣医師として働いています。