この記事のポイント
- 2026年からイングランドでは、賃貸住宅でペット飼育を希望するテナントの権利が強化されました。
- 大家さんはペット飼育のリクエストを検討し、拒否する場合は理由を示す必要があります。
- ただし、これは「必ずペットを飼える権利」ではなく、合理的な理由があれば拒否される場合もあります。
- このルールは民間賃貸(プライベートレンタル)が対象です。公営住宅(ソーシャルハウジング)のテナントには適用されません。
渡英以来ずっと賃貸暮らしの私。約4年前、今の職場に転職するタイミングで物件を探したときは特に苦労しました。コロナ後の需要急増で内見予約すら争奪戦の時代、ペットがいると選択肢はさらに狭まります。職場のオファーをもらってから物件が決まるまでなんと6ヶ月。「もし迷惑ならオファーを辞退します」と早めに伝えていたのですが、職場が辛抱強く待ってくれて、本当に助かりました。
そんな経験があるので、2026年5月からイングランドで始まった新しいルールは他人事とは思えません。
Renters’ Rights Act で何が変わった?
これまでイングランドの民間賃貸では、大家さんが「ペット不可」と一律に決めている物件が多くありました。もちろん以前からペット可の物件もありましたし、個別に相談して許可をもらえるケースもありました。ただ実際には、賃貸暮らしの人にとって、ペットを飼うことはなかなか大変なことでした。
2026年5月1日から、民間賃貸のテナントには、ペットを飼いたい場合に大家さんへ書面でリクエストする権利が明確になりました。大家さんはそのリクエストを検討し、拒否する場合には理由を示す必要があります。つまり、これまでのような「うちはペット全部ダメです」という一律の対応は、今後かなり難しくなります。
テナントからリクエストがあった場合、大家さんは28日以内に書面で回答する必要があります。正当な理由なく対応が行われない場合には、テナントは裁判所などを通じて対応を求めることができます。
そして今回の改正でもう一つ大きな変化が。ペット専用の追加デポジット(保証金の上乗せ)が認められなくなりました。テナントにとってはうれしい変化です。
「リクエストする権利」であって「飼う権利」ではない
新しいルールは「賃貸でも無条件にペットを飼ってよい」という法律ではありません。「テナントがペット飼育をリクエストする権利があり、大家さんはそれを不合理に拒否できない」というものです。イギリスの住宅支援チャリティー Shelter England も、合理的な理由に基づく拒否は今後も可能と説明しています。(Shelter England)
大家さんが拒否できる合理的な理由の例としては、物件がペットを飼うには小さすぎる、アレルギーのある入居者がいる、建物全体の管理規約でペット不可、法律上認められていない動物、などが挙げられます。逆に「ペットが好きではない」「以前嫌な経験をした」だけでは弱いとされています。ただ、何が「合理的」かの法的定義は明確ではなく、ケースバイケースの判断になります。
獣医師として興味深いのが、「動物福祉上の懸念」もケースによっては考慮される可能性があるという点。動物側の視点も判断材料になりうるのはUKらしい考え方だなと感じます。
適用範囲について: この制度は原則として既に賃貸契約を結んでいるテナントが対象です。物件探し中の方も交渉はできますが、大家さんへの回答義務は契約後ほど明確ではありません。また、すでに「ペット不可」の物件に住んでいる方も、この法改正によって改めて書面で申請できるようになりました。
リクエストの際のポイント
書面でリクエストする際は、以下の情報を入れておくと大家さんも判断しやすくなります。
- 動物の種類・品種・年齢・体格
- ワクチン接種、マイクロチップ登録、避妊・去勢の状況
- しつけの状況や留守番時間
- 騒音やにおいへの対策
- 物件へのダメージ防止策
- 必要に応じて獣医師や以前の大家さんからのリファレンス
特に犬の場合は、散歩の頻度や吠え対策まで記載できると、大家さんの安心感につながります。
「飼える」と「幸せに暮らせる」は別の話
この改正は、ペットを迎えたい人・保護動物を迎えたい人にとって、とても大きな前進だと思います。「最初から一律にダメ」という状況が減っていけば、新しい出会いのチャンスも広がります。
ただ、許可が出たとしても、「その子が幸せに暮らせる環境かどうか」はまた別の問題です。物件の広さ、床材、生活スタイル、留守番時間、医療費。。。などなど、ペットを迎える前には、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
賃貸でのペット飼育が少しずつ前向きな方向に変わっていくのは、ペットと暮らしてきた者として、とても嬉しい変化です。
こんな人には追い風かも
- 賃貸だからとペットを諦めていた方
- 現在ペット不可物件に住んでいる方
イギリスの犬の保護・福祉団体 Dogs Trust の Ruairidh Nichols 氏は、「この新しい権利によって、ペットを飼うことの恩恵が持ち家オーナーだけのものでなくなった。これは長年にわたって私たちがキャンペーンを続けてきたことであり、ペット好きなテナントにとっての大きな転換点だ」とコメントしています。
もちろん、すべてのケースで必ずペットが飼えるようになるわけではありません。ただ、「最初から無理」と諦める前に、まずリクエストしてみる選択肢ができたことは、大きな変化だと思います。
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