【獣医費用②】もし病気になったら?症状・処置別に費用を把握しよう

動物病院でかかる費用は、「症状や病名」よりも「どんな検査や処置が必要か」の方が費用と直結します。同じ嘔吐・下痢でも、外来の診察と薬だけで済む場合と、血液検査・点滴・入院・画像検査まで必要になる場合では、費用が数倍変わります。

今回は処置ごとの相場と症状別の費用シミュレーションをご紹介します。 夜間・救急の費用は次の記事で詳しく見ていきますので、ここでは日中の通常診療に絞ります。

💴 £1 ≈ ¥214(2026年5月時点・参考値)


目次

処置別の費用:早見表

まず、よく行われる処置・検査ごとの費用の目安です。これが「積み重なる」ことで最終的な請求額が決まります。

処置・検査 費用の目安
院内血液検査(In-house blood test) £100〜250
腹部超音波(Abdominal ultrasound) £200〜450
心エコー(Echocardiography) £200〜600
POCUS / AFAST / TFAST(簡易エコー) £90〜150
レントゲン(X-rays) £150〜350(1〜3枚が目安)
院内尿検査(In-house urinalysis) £30〜80
鎮静(Sedation) £100〜200
全身麻酔(General anaesthesia) £200〜400
輸液・点滴(IV fluids) £100〜200
血圧測定(BP monitoring) £25〜80

POCUS(Point-of-Care Ultrasound)/ AFAST(Abdominal Focused Assessment with Sonography for Trauma)/ TFAST(Thoracic Focused Assessment with Sonography for Trauma) は、通常の超音波検査よりも短時間で行う簡易的なエコー評価です。お腹や胸の中に出血や液体が溜まっていないかを素早く確認するために使われることが多く、救急・トリアージ場面で特に活躍します。フルの超音波検査ほど詳細な情報は得られませんが、その分費用を抑えられる場合があります。

このほか診察料、処方薬、術後の再診料も別途かかります。検査が2〜3つ重なるだけで£500を超えてくることが、この表を見るとわかりやすいかと思います。

なおレントゲンについては、上の金額は最初の1〜3枚程度が目安です。それ以上撮影する場合は追加料金が発生することがほとんどで、「1枚ごとにいくら」と設定している病院もあれば、「〇枚までいくら」というパッケージ形式の病院もあります。


症状・ケース別 費用シミュレーション

ケース① 嘔吐・下痢(軽症・外来対応)

主な処置: 診察 + 吐き気止め注射 + 整腸剤 + 処方食 ± 血液検査

費用の目安:£100〜400

若くて元気な動物の単発の嘔吐・下痢であれば、血液検査なしで対応することもあります。「昨日から下痢をしている」と来院して、診察・注射・薬で£100〜150前後というケースも少なくありません。


ケース② 嘔吐・下痢(重症・入院対応)

主な処置: 診察 + 血液検査 + 腹部エコー + レントゲン + 吐き気止め注射 + 輸液 + 鎮静 + 日帰り入院 + 整腸剤・処方食

費用の目安:£600〜1,500

脱水が強い、反復嘔吐が続く、腹痛がある。。。こうした場合は血液検査や画像検査、入院での治療を勧めることが多くなります。ケース①と「嘔吐・下痢」は同じでも、必要な処置が増えると費用が大きく変わります。


ケース③ 異物誤飲(手術まで必要なケース)

主な処置: 診察 + 血液検査 + エコー + レントゲン + 輸液 + 開腹手術(Ex-lap)+ 腸切開(Enterotomy)+ 入院

費用の目安:£2,000〜3,500(夜間・救急・合併症ありで£4,000以上になることも)

内視鏡で取り出せるか、開腹が必要かによって費用差があります。消化管が詰まる前に受診できれば、それだけ処置が軽くて済む可能性があります。「何かを飲み込んだかも」と気づいたら、様子見より早めの受診が、結果的に費用を抑えることにもつながります。


ケース④ 中毒・誤食

チョコレート誤飲 診察 + 嘔吐誘発注射 + 活性炭(Activated Charcoal) 費用の目安:£120〜250

早めに受診すれば比較的軽い処置で完結することが多いです。

ブドウ・レーズン誤食 診察 + 嘔吐誘発注射 + 活性炭 + 血液検査 +/- 48時間の輸液入院  費用の目安:£500〜1,200

ブドウは少量でも急性腎障害のリスクがあり、経過観察が長くなりやすいです。


イギリスの「入院」は日本とだいぶ違います

ここで少し、入院についてのイギリス独特の事情をお伝えします。

日本では数日〜数週間の入院治療も珍しくないと思うのですが、イギリスの動物病院での長期入院はとても稀です。その背景には、少しややこしいイギリスの夜間医療体制があります。

イギリスでは法律上、動物病院は患者に24時間体制のケアを提供する義務があります。ただしこれは「一つの病院が24時間すべてをカバーしなければならない」わけではありません。多くの動物病院は診察時間が終わるとスタッフがいなくなり、夜間は専門の夜間病院(out-of-hours provider)に委託しています。

つまり、入院が必要になった場合、こういう流れになることが多いです。

日中:かかりつけ病院で治療・管理 → 夕方:飼い主さんが夜間病院へ送迎 → 翌朝:かかりつけ病院が開いたら戻ってくる

これを数日繰り返すこともあります。送迎は基本的に飼い主さんが行います。夜間病院は別途請求になるため、費用も嵩みます(夜間・救急費用については次の記事で詳しくご説明します)。

急変リスクがある場合はほぼ必ず夜間病院へ移動しますが、症状が安定している場合は「夜間に継続的なチェックは入らない」という同意書にサインした上で、かかりつけ病院に一晩残す形をとることもあります。

こうした費用面・現実面でのハードルもあり、イギリスでは「できるだけ早く自宅療養に切り替える」という方向性がとられやすいです。これは動物医療に限った話でもなく。。。少し個人的な話をすると、私自身もイギリスのNHSで緊急帝王切開を経験したことがあるのですが、術後40時間ほどで退院でした。人間でもそういう国なので、動物医療も自然とその文化の中にある気がします。


高額になりやすいケース

これまでの内容をふまえ、特に費用が高くなりやすいのは以下のような状況です。

  • 手術が必要なとき: 軟部組織手術で£500〜3,000、前十字靭帯手術(TPLO等)で£2,000〜4,000
  • 入院が必要なとき: 比較的安定した症例で1泊£100〜400前後が目安。継続的なチェックが不要なタイプなら安く済む場合もありますが、夜間病院での入院になると高くなります(詳しくは次の記事で)
  • 夜間病院への移送が必要なとき: 夜間診察料+入院費が別途加算(詳しくは次の記事で)
  • 専門病院・二次診療への紹介: 一次診療の費用に加え、専門病院での費用が別建てに(詳しくは第4回で)
  • 子宮蓄膿症・尿閉塞・重篤な膵炎など: 手術や集中的な輸液管理が必要になることが多く、£1,500〜4,000以上になるケースも

英国保険協会(ABI)の2024年データによると、ペット保険の1件あたりのクレーム平均は£685(約14万4,500円)とされています。検査・処置・薬・再診が重なると、これくらいの金額になることは珍しくありません。ペット保険については、シリーズの別の記事で詳しくご紹介します。


早めの受診が、費用を抑えることにもなる

「病名や症状」よりも「処置の組み合わせ」で費用が決まります。同じ症状でも、早く来院できたことで処置が軽く済むケースは実際にたくさんあります。「おかしいな」と感じたら早めに相談するのが、動物にとっても、費用の面でも、プラスになることが多いです。

また費用について不安があれば「見積もりをください」と伝えていただくのも大切です。


次回は「深夜の緊急病院費用はどのくらい?」。通常と違う夜間診療の費用についてお届けします。

 

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