花火を怖がるワンちゃんへの対処法

日本で花火といえば夏の風物詩ですが、イギリスで花火といえば秋の風物詩。

イギリスでは11月5日は『ボン・ファイヤーナイト』または『ガイ・フォークスデイ』と呼ばれ、全国各地で篝火(かがりび)が焚かれ、花火大会が行われます。

豆知識

このイベントの起源は今から約400年前。当時の王政に不満を持ったガイ・フォークスとその一味が国王ジェームズ1世を暗殺するため、1605年11月5日に国会議事堂爆破する計画を立てます。この陰謀は失敗に終わり、ガイ・フォークスを含む事件の首謀者は処刑されます。それ以降、11月5日は国王ジェームズ1世がこの爆発未遂から生き残った記念日として、そしてガイ・フォークスの火薬爆発事件の失敗に感謝する記念日として祝われるようになりました。

さて、花火大会と聞くと私はなんだかワクワクしてしまうのですが、犬にとってはそうとも限りません。

犬の聴覚は人間に比べるとかなり発達しており、私たち人間よりも音に敏感です。花火のような大きな音が苦手というワンちゃん、少なくありません。中には花火の音にびっくりして逃げ出してしまう子、迷子になってしまう子、パニックになり怪我をしたり物を壊してしまう子もいます。

fireworks大きな音にびっくりしたり、恐怖を感じるのは犬の本能であり、そのような時にいつもと違った行動をとったり、吠えたり、逃げようとするのは正常な反応です。私たちだって、急に大きな音がしたら「わっ!!!」ってなって、オロオロしますよね。ただ、このような緊張した状態が長く続いたり、反応があまりにも過剰であったり、パニックになってしまう子にはなんらかの対処が必要です。

犬の恐怖症の症状は放っておくと悪化する傾向があるので、早期発見・早期対応がとても重要になってきます。

では、一体どうすればいいのか?

まずは普段から犬をしっかり観察して、大きな音や環境の変化にどのように反応するのか分析して見ましょう。

【騒音恐怖症】よく見られる症状

  • 落ち着きがなくなる
  • いつもより吠える
  • 震える
  • 硬直する
  • 隠れる
  • 息切れ・激しいパンティング
  • よだれを垂らす
  • あくびをたくさんする
  • 脱尿・脱糞
  • 嘔吐・下痢
  • 穴を掘ろうとする
  • 逃げ出そうとする
  • 物を壊す
  • 攻撃的になる 

音に対して上記のような反応を示す子、分離不安症を抱えている子、環境変化への適応が苦手な子は花火の音に対しても過剰な恐怖心を覚える可能性大です。花火大会のある日はしっかりと対策をとりましょう。

花火の音を気にしない子、動じない子の場合は特に特別なことをする必要はありません。普段通り接してあげてください。ただ、騒音恐怖症はある日突然始まることがあります。ちょっとした犬の変化やサインを見逃さないよう、日頃から犬の様子をしっかり観察するよう心がけましょう。

 

具体的にどんな対策をとればいいの?

花火大会に犬を連れていかない:

当たり前のことですが、「騒音恐怖症」の可能性がある子を花火大会に連れて行くことは避けましょう。

明るいうちに散歩をする:

お散歩は花火が始まる前に済ませておきましょう。しっかり運動すること、適度な疲労感は精神的にもプラスになります。

戸締りをしっかりしておく:

パニックになるとドアや窓をぶち破り、強行突破し逃げ出してしまうことも。。。戸締りはしっかりとしておきましょう。

マイクロチップの情報を確認しておく:

万が一逃げ出してしまったり、迷子になってしまった時に備えて、マイクロチップの情報が最新のものであるか確認しておきましょう。

Safe haven(安全地帯)を確保する:

犬にとってここは絶対に安心と思える場所があること、安全地帯に逃げる選択肢があること、自分の感情をコントロールできる場所があることは、犬が恐怖心を克服するにあたって大きなプラスになります。(詳しくはこちらで→「犬の行動学:『Safe haven(安全地帯)』のすすめ

犬の行動学:『Safe Haven(安全地帯)』のすすめ

2016.04.21

DAP(Dog Appeasing Pheromon)犬用鎮静フェロモン剤を使う:

DAPは「育児フェロモン」と呼ばれる授乳中の母犬から分泌されるフェロモンを人工的に作り出したものです。このホルモンは子犬だけでなく成犬にも「癒し」や「安心感」を与えることがわかっています。効果には個体差がありますが、効く子には効きます。犬の健康に悪影響を及ぼしたり、行動を悪化させるという報告はないので試す価値ありです。Adaptilというディフュザータイプ、スプレータイプ、首輪タイプの商品があります。

その他のストレス対策効果が期待できるレメディーやサプリメントを使う:

フェロモン剤への反応がイマイチだった、もう少しナチュラルな物を試したいという場合はPet Remedyがオススメです。リラックス効果のあるエッセンシャルオイルとエクストラクトを調合した商品でディフューザーとスプレータイプがあります。また、Pet Remedyは犬だけでなく猫やその他の小動物にもリラックス効果を与えることが期待できるので、犬以外の動物も飼っている家庭にもってこいです。

Nutracalmという動物病院でのみ取り扱いをしているサプリメントは『L-トリプトファン、ギャバ、L-テアニン、パシフローラ エキス、ビタミンB群、イノシトール』といったストレス対策に効果が期待される成分をたくさん含んでいます。

また、Zylkine(ジルケーン)日本語サイト)という抗不安サプリメントも動物病院で取り扱いの多い商品です。母乳を飲んでスヤスヤ眠る赤ちゃんをヒントに開発されたサプリメントで、母乳成分α-S1トリプシンを配合しています。このようなサプリメントの効果には個人差がありますが、好反応を見せる子もいるので、獣医師と相談し試してみる価値ありです。

怒らない:

当たり前のことだけど、大切なことです。犬が怯えている時に怒ったり、お仕置きをすることは追い討ちをかける行為です。そのような行動は犬の恐怖を増長させる事になるので絶対にダメです。

自然体でいる。犬が恐怖を感じていることに気づいていないふりをする:

犬を無視するのではなく、犬が恐怖を感じているという状況を無視することを心がけましょう。犬が怯えていることに気づかなりふり、花火の音も聞こえていないふりをして、通常通り犬に接してみて下さい。その段階で犬がソファーの上やSafe havenの中で落ち着き始めた場合は、それ以上何もしなくて大丈夫です。花火の音から気を紛らわせるために、そして花火の音とポジティブな感情を関連づけるために大好きなおもちゃで一緒に遊ぶこともお勧めです。ここで一番重要なのは、飼い主が自然体でいること、リラックスしていること、楽しいポジティブな雰囲気を作り上げることです。 %e8%87%aa%e7%84%b6%e4%bd%93

多くの場合、環境を整え、飼い主さんのアプローチを変えるだけで状況はかなり改善されます。ですが、中にはそれでも落ち着くことができなかったり、パニックになってしまう子もいます。そんな時は動物行動学に精通している獣医師に相談し、行動療法や抗不安剤などの薬の処方についてアドバイスを受けることをお勧めします。

 

『脱感作療法』(desensitization)と『逆条件づけ』(counter-conditioning)

『脱感作療法』『逆条件づけ』は『騒音恐怖症』を根本から緩和・改善するために採用されている最も一般的な行動療法です。

『脱感作療法』と『逆条件づけ』

『脱感作療法』とは、あらかじめ録音された音源などを使って、犬が苦手としている音刺激を、小さなもの(小音量)から徐々に大きなもの(大音量)に変えていき、恐怖の対象に慣らしていく方法です。

『逆条件づけ』は、恐怖反応を引き起こすマイナスの対象(=花火)に対し、プラスの刺激(=食べ物、オモチャ遊びなど)を条件づけることによって、恐怖反応を減少させていく方法です。

犬の『恐怖症』を根本から解決してあげることは、犬のQOL(生活の質)の向上にとってとても重要なことです。『騒音恐怖症』の症状が重度な子、年々ひどくなっている子、また環境改善などの対策では効果がみられなかった子にはぜひチャレンジしてもらいたい治療法です。

行動療法の注意点

ただし、行動療法は簡単ではありません。間違った方法で実践してしまうと逆効果になる場合があります。行動療法を実践する際はまず獣医師に相談することをお勧めします。

また、行動療法は時間と根気も必要となってきます。最低でも2−3ヶ月はかかると言われています。花火大会が数週間に迫っている今現在、イギリス在住の犬に対して『花火に対する行動療法』を実践することは残念ながら現実的ではありません。イギリス在住の場合、年末年始の花火が落ち着いた2月頃が行動療法を開始するベストな時期だと思います。

 騒音恐怖症の行動療法に興味がある方へ朗報!!!
犬の保護団体DogsTrust(ドッグズ・トラスト)が「Sound Therapy for Pets:Sound Scary」という行動療法プログラムをウェッブサイトで無料公開しています。全て英語ですがガイドブックと音源が無料でダウンロードできるので要チェックです!

薬の処方について

抗不安剤のような薬はちょっと。。。と思われる方も多いかもしれませんが、短期的な処置として薬に頼ることも時には大切です。もちろん『行動療法』とフェロモン剤やレメディー、サプリメントなどを組み合わせて問題を根本から解決することが最も理想的なアプローチ。安易に薬に頼り、問題から目を背けることはあってはならないことです。

ですが、花火の日まで時間がない場合、症状があまりにも酷く今すぐに『恐怖』『不安』から犬を解放してあげることが必要な場合、思い切って薬に頼ることも大切です。

『恐怖症』は治療や対策が遅れるとどんどん酷くなります。大切なのは、必要な時は薬に頼り、それと同時に行動療法などの治療に取り組み、根本的な問題解決に向けて努力することです。

犬の恐怖症の克服はそう簡単ではありません。うまくいかない時、困った時は一人で悩まず、獣医師や犬の行動学の専門家に相談しましょう。




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ABOUTこの記事をかいた人

香川県高松市出身 地元香川の高校卒業後、ニュージーランドでの語学留学・大学進学準備コースを経てオーストラリア・メルボルン大学獣医学部に進学。現在イギリスで臨床獣医師として働いています。