子犬・子猫・動物を飼う前に考えて。

以前イギリスではペットショップで動物を売っていないって本当??(前編)で述べた通り、イギリスでは犬猫の展示販売は非常に珍しいことです。つまり、ほとんどの犬猫が保護施設またはブリーダーからやってきます。

イギリスではペットショップで動物を売っていないって本当??(前編)

13th 3月 2016

このように言うと、とても理想的な環境に思えますよね。

ですが、、、現実はもっと複雑です。

イギリスにも悪質ブリーダーがいる?!

イギリスではここ数年、悪質なブリーダー・販売者が急激に増えています。ここ1週間だけでも数件、明らかに悪質なブリーダーから購入された子犬が健康診断にやってきました。

悪質なブリーダーから子犬を購入してしまった飼い主さんに「どうやってこの子のブリーダー探したの?」と聞くとほとんどの場合が、「インターネット上の動物販売を目的とした掲示板・クラシファイドサイト(例えばこのようなサイト)で探した」という答えが返ってきます。

インターネットが普及したこのご時世、一昔前までは大変だったブリーダー探しもインターネットを使えばあっという間。ワンクリックでたくさんのブリーダー情報が出てきます。多くの人がインターネット上でブリーダーを探し、ブリーダーと連絡を取り、子犬・子猫を購入するという方法でペットを購入するようになりました。

この一見何の問題もないような「ブリーダー探し」、、、実はたくさんの落とし穴があります。

ウェブサイトに偽の情報や写真を載せることは簡単です。インターネット上で良質なブリーダーのフリをすることは本当に容易です。『審査に通った良質なブリーダーしか登録されていません』『悪質なブリーダー・販売業者は許されるべきではありません』と謳っているウェブサイトにも良質なブリーダーを装った悪質なブリーダーがたくさん登録されています。

中には、組織的に何台もの携帯と偽名を使いこなし、偽の家、偽の家族と偽の親犬を準備して、良質なブリーダーを装うケースもあります。インターネット上の情報を鵜呑みにして犬や猫を購入し、こんなはずじゃなかった。。。そんなつもりじゃなかった。。。ということがよくあるのです。

このような状況の一番の被害者は『動物』です。

まずはイギリス最大の犬の保護団体「ドッグズ・トラスト」によって制作された『Think Before You Click (クリックする前に考えて)』というビデオをご覧ください。これは年々増加しているインターネット経由でブリーダーを見つけ、子犬購入するという行為を減らすための啓蒙ビデオです。

 最後のナレーションの訳

私たちは、クリックひとつで物事を決めることができる現代社会に生きています。ただ、表向きと現実が同じとは限りません。インターネットを通して子犬を購入することは、違法な子犬の繁殖を支え、あなたの家族に高額な獣医費用という経済的な負担、人獣共通感染症の危険、そして愛するペットを失うという精神的な苦痛を与える可能性があります。クリックする前に考えて” 

Think Before You Click

『クリックする前に考える』『飼う(買う)前に考える』。。。
本当に大切なことです。

悪質ブリーダー問題で一番責めらせるべきは、もちろん動物をお金儲けの道具としてしか見ていない悪質なブリーダー、業者たち。ですが、消費者の責任も重大です。

『知らなかった。。。』では許されない問題。

イギリスの悪質なブリーダー増加の背景には、消費者の『純血種・デザイナードッグ・キャット(純血種同士のミックス)を飼いたい』『今すぐ欲しい』『少しでも安く手に入れたい』という『欲』、『飼い主の知識不足』、そしてインターネットを通してブリーダー探し・ペットの購入ができるという『手軽さ』が大きく影響しています。

悪質なブリーダーを減らすには、法的な規制や法改正ももちろん必要ですが、それだけでは無理です。消費者自身のモラル・知識を向上させていくことが不可欠であり、一番の近道ではないかと思います。また一人でも多くの人に正しい知識を持ってもらうため、獣医師や動物業界で働く者も努力をしなければなりません。

 

「動物を飼いたいな。」と思った時、まず最初にしてほしいこと

『動物を飼うことが自分にとって、家族にとって、そして迎え入れるペットにとってベストな選択か』ということをじっくり考えること。

例えば、

  • なぜ動物を飼いたいのか
  • 飼おうとしている動物(犬種・猫の種類など)の特徴について知識があるのか・勉強する意思があるのか
  • 飼おうとしている動物はあなたのライフスタイル、家族構成、住宅環境に適してるのか
  • 10−20年という時間を共に過ごす覚悟があるのか
  • 毎日欠かさずに世話をする覚悟・余裕があるのか(散歩、体調管理、排泄処理など)
  • 経済的に支えることができるのか
  • 最期を看取る覚悟があるのか
  • ブリーダーだけではなく保護施設から動物を引き取るという選択肢も考慮したのか
  • 良心的で知識豊富なブリーダーさんを見つけるために時間をかけることができるのか

などなど、、

たくさんのことを考えてください。日本の環境省が発行している「飼う前に考えて!」というパンフレットに動物を飼う前に考えるべきことが簡潔にまとめられているので、これから動物を飼おうと思っている方は一読の価値ありです。

また『東京都福祉保健局』による「犬を飼うってステキです-か?」という動物愛護本もこれから動物を飼おうと思っている人に是非読んでもらいたい一冊です。サクッと読めちゃいますが、動物を飼うということの『現実』『苦労』『喜び』がギュッと詰まっている作品だと思います。

犬を飼うってステキです-か?(1/4)
犬を飼うってステキです-か?(2/4)
犬を飼うってステキです-か?(3/4)
犬を飼うってステキです-か?(4/4)

情報収集・勉強をしている際、わからない事や不安な事があれば、飼い始める前に動物病院や動物トレーナーなどの専門家にアドバイスを求めてください。

そして、インターネットやテレビで流れている良い情報だけを鵜呑みにせず、デメリットもちゃんと調べ、冷静に、そして現実的に判断することも重要です。しっかりと情報収集をし、勉強をし、考え抜いた上で動物を迎え入れることを決断して下さい。

そして、動物のことを本当に大切に思うのであれば『飼わない』という選択も時には必要であること、愛のある選択であることを忘れないでほしいです。




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ABOUTこの記事をかいた人

香川県高松市出身 地元香川の高校卒業後、ニュージーランドでの語学留学・大学進学準備コースを経てオーストラリア・メルボルン大学獣医学部に進学。現在イギリスで臨床獣医師として働いています。