以前『子犬・子猫・動物を飼う前に考えて。』『動物を飼う前に「そうだ 動物病院、行こう」』でペットを飼う前の心構えや考慮すべきことをお話ししましたが、今日は『良いブリーダーの探し方』についてお話ししたいと思います。イギリスの状況を踏まえての話なので、日本やその他の国では当てはまらない内容もあるかと思いますが、万国共通の事柄も沢山あるので参考にして頂けると幸いです。
CONTENTS
良いブリーダーとは?
良質なブリーダーとは犬種の保存と犬質の向上を目指して繁殖をするブリーダーであり、特徴として
- 犬に関する知識があり、勉強をしっかりしている
- 遺伝的な病気はできる限り検査などをしてリスクを減らす努力を惜しまない
- 問題行動や先天的な問題がある犬は繁殖からリタイアさせる
- リタイア犬もしっかりと面倒をみる
- 行きつけの動物病院があり親犬・子犬の健康診断・治療をしっかりとしている
- 犬種の流行に流されない
- 購入希望者・購入者の質問にしっかりと受け答えをする
- 購入者を選ぶ
- 購入後の対応がしっかりしている
などが挙げられます。
なぜ良いブリーダーを探すことが大切なのか
健康状態・アフターケアに大きな差
良質なブリーダーからやってくる子犬は、購入者に引き渡される前に必ずと言っていいほど獣医師の健康診断を受けており、基本的に健康状態の良い子犬たちです。体調が良くない子はきちんと治療を受けてから引渡しとなります。それでも中には引渡し後に体調を崩したり、病気が発覚することもありますが、きちんとしたブリーダーは必要であれば治療費を負担したり、最初に健康診断をした獣医師と連絡を取ったりときちんとした対応をしてくれます。また、良質なブリーダーからやってくる子犬の多くは引渡し時にペット保険(ケネルクラブやペットプランという大手の保険会社の1ヶ月無料保険の利用が多い)に入っています。なので、もしも子犬を引き取った後に、その子が体調を崩し高額な医療費が必要となった場合も医療費の多くがカバーされます。
悪質なブリーダーからやってきた子犬の多くが低体重、ノミなどの外部寄生虫の寄生、軟便・下痢、皮膚や毛の状態が悪いなど、健康状態があまり良くありません。中には致死率の高いパルボウイルスにかかっている子犬もいます。私の個人の経験ですが、購入後1−2週間以内に死に至る(または安楽死となる)子犬は悪質なブリーダーからやってきた子犬がほとんどです。
引渡し時にペット保険に入っている=100%良いブリーダー とは限りません
しつけ・トレーニングのしやすさに大きな差
良質なブリーダーは親犬の気質もしっかり考慮して繁殖し、子犬は親犬の愛情を充分受けて育っています。また、人ともしっかりと触れ合っており社会性が身に付いている子が多いです。なのでしつけやトレーニングもスムーズにいくことが多く、将来的に問題行動を起こす子も少ないです。
その反面、悪質なブリーダーからやってくる子犬は親犬の気質なんてそっちのけで繁殖され、母親から早く引き離され、人と触れ合うこともなく、粗悪な環境で育っており、社会性が身についていない子犬が多いです。そのため、しつけやトレーニングが一筋縄ではいかないことも多々あります。
もちろん、幼少期の環境だけが犬の性格や行動性を左右するわけではありませんし、飼い主さん次第で様々な問題行動を克服することは可能です。ですが、簡単なことではありません。このような子犬こそ、犬の生態・行動学に熟知したベテラン飼い主さんに飼われるべきなのですが、悪質なブリーダーから子犬を購入してしまう飼い主さんの多くが、犬の初心者。初めて犬を飼う人や、犬の生態・行動学・トレーニングの知識・経験が少ない人が多く、トレーニングがさらに困難に。
その上、前述した通り健康状態が良くない子が多く、ワクチン接種が遅れ、公園デビューが遅れ、他の犬や人に会う機会が遅れ、社会性を学ぶ機会が遅れ。。。しつけやトレーニングがさらにさらに困難になっていきます。まさに負のスパイラル。そして、結果、将来的に噛みつき、無駄吠え、攻撃などの問題行動が起こり、飼育放棄されたり安楽死されるという悲しい結末になってしまうことが多いです。
ブリーダー選びは犬と飼い主の犬生・人生を大きく左右する問題なので、しっかりと時間をかけて慎重に選ぶことが大切です。
悪質なブリーダーを減らすことにつながる
良いブリーダーから犬を受け入れるということは、悪質なブリーダーからは犬を買わないということ。
動物愛護先進国と言われているイギリスでも、残念ながら動物を『お金儲けの道具』としか思っていない悪質なブリーダー・販売者が近年急激に増えています。
ある子犬の飼い主さん。ブリーダーから『マイクロチップの登録証』『動物病院のロゴ入り、署名済み、ワクチンのラベルも貼られているワクチン証明書』『食事や寄生虫駆除のアドバイス』などの書類を受け取り、ちゃんとしたブリーダーから子犬を買うことができたと喜んで健康診断にやってきました。
ですが書類を一つづつチェックしたとろこ、、、
デタラメだらけということが判明。
- マイクロチップ:挿入されていませんでした。登録証はデタラメ、番号も登録されておらず、足がつかない状態。
- ワクチン証明書:署名欄に署名入ってます。次のワクチンの期日も記入されています。ワクチンのラベルらしきものも貼られています。ですが。。。。よーく見ると、、次のワクチンの期日に記入されている日時、2ヶ月後!子犬のワクチンは2−4週間おきに2−3回打つのが一般的。2ヶ月後に2回目のワクチンなんてありえません。ラベルとして貼られていたシールはワクチンの空瓶から無理やり剥がしたようにも見える。署名は誰だってできますよね。ワクチン証明書に載っている動物病院に電話しても、そのようなブリーダーは登録されておらず手がかりなし。
- ブリーダーの連絡先:デタラメ。繋がりません。
何もかも全てがデタラメすぎで足がつかない。。。
これはほんの一例。このような、マイクロチップの登録証やワクチンの証明書の偽造はよくあること。ペットパスポートの偽造や血統証明書の偽造も珍しくありません。名前も、家も、家族も、親犬も全て偽物という場合もあります。
イギリスは動物に関する法整備は世界の中でもトップクラス。繁殖の頻度や生涯繁殖回数、子犬の引き渡し年齢やマイクロチップ義務化など多くの法規定があります。法律はもちろん大切です。だけど、それだけじゃダメなんです。
悪質なブリーダーは色々と工夫をして法の隙間を突いたり、人の目を欺いたり、または法律なんて気にしなかったり、、、需要がある限り様々な手を使ってビジネスを続けようとします。
動物を取り巻く法律を改正したり厳しくするだけではなく、消費者のモラル・知識を向上し、悪質なブリーダーから動物を購入しないようにすることは悪質なブリーダーを減らすことに必要不可欠です。
良いブリーダーはどこで見つける?
- 純血種の子犬を探している場合はイギリス・ケネルクラブ(Kennel Club Assured Breederに登録されているブリーダーリスト)をチェックする
- 純血種の子猫を探している場合はイギリスの猫血統登録団体GCCF (The Governing Council of the Cat Fancy)のブリーダーリストをチェックする
- 動物病院・トレーナーなど動物の専門家に問い合わせる
以外と見落としがちなのが『動物病院に問い合わせる』という方法。獣医師はブリーダーに関する知識や情報が豊富です。良質なブリーダーの方は、必ずどこかの動物病院の常連さんです。言い方を変えると、各動物病院、必ずと言っていいほど顧客にブリーダーの方が何人かいます。なので、動物病院に問い合わせることで、貴重な情報が入ってくる可能性、大いにあります。もし、良いブリーダー探しで行き詰まったら是非近所の動物病院に足を運んでみてください。
『Kennel ClubやGCCFに登録されている』『ドッグ・キャットショーなどの受賞履歴がある』というのはブリーダーを選ぶ際、高ポイントになると思います。ですが、だからといって絶対に『良いブリーダー』『健康な犬・猫』とは限りません。どんなに有名なブリーダーであっても、直接会い、しっかりとその人の人柄を見極め、親犬・猫と子犬・子猫の状態・性格を実際に観察し、獣医師による健康診断書・遺伝性疾患の検査の有無など、たくさんのことを質問するというステップを怠らないように。
その他に、動物に詳しい友人に尋ねる、ドッグショーやキャットショーに足を運びブリーダーと知り合いになる、購入したい犬種・猫種の掲示板などに行って情報収集をしたり、質問をすると良いブリーダーさんの情報が入ってくることも。情報は多いに越したことはありません。情報収集にしっかり時間をかけてください。10年ー20年の時間を一緒に過ごすことになるペット。大切な家族の一員を探すことに時間を惜しまないでください。
子犬販売サイトは?
インターネット上にある動物販売を目的とした掲示板・クラシファイドサイト、色々ありますが、このような子犬販売サイトは悪質ブリーダーの温床、避けましょう。
個人的な経験上の話ですが、ブリーダーの対応や購入した子犬の健康状態を不安・不信に思い病院にやってくる飼い主さんのほとんどがインターネットの掲示板・クラシファイド経由でブリーダーを見つけ、子犬を購入しています。
もちろんインターネット販売サイトを使って宣伝をしているブリーダーが全て悪質なわけではありません。ですが、インターネットという環境は悪質ブリーダーが紛れこみやすい環境、購入者が騙されやすい環境、衝動買いを誘発する環境、詐欺を行いやすい環境であることは間違いありません。ウェブサイトに偽の情報や写真を載せること、インターネット上で良質なブリーダーのフリをすることは本当に容易です。『審査に通った良質なブリーダーしか登録されていません』『悪質なブリーダー・販売業者は許されるべきではありません』と謳っているウェブサイトにも良質なブリーダーを装った悪質なブリーダーがたくさん登録されています。
- 同じ電話番号が複数の広告に貼られている:連絡先の電話番号をGoogle検索して、他の子犬の広告にも使われていないかチェックしましょう
- 子犬の詳細内容がコピペされている:連絡先同様、子犬の詳細の言葉もGoogle検索してみましょう
- 『ミニチュア』『ティーカップ』というキャッチーな言葉を強調する
- 同じ子犬の写真を使いまわしている:Googleの画像検索を活用すると画像の使い回し・無断転載を発見しやすいです
- 子犬がかなり幼いのにワクチン済み・子犬のワクチンコース完了済みと書いてある:子犬の1回目のワクチンは通常6週齢以降に行われ、子犬のワクチンコースが完了するのは早くても10週齢以降です
- パスポートを取得している:ヨーロッパ諸国のパピーミル出身の可能性大です
- ケネルクラブに登録していると書いてあるが、ケネルクラブに直接問い合わせると登録されていない
動物保護施設・里親募集も忘れないで
そして、忘れないでほしいのが、動物保護施設などで里親を必要としている動物の存在。
動物保護施設には子犬・子猫、純血種の犬・猫、ウサギやも多く収容されています。もちろん保護動物が全ての飼い主さんに適合するわけではありませんし、動物好きなら絶対保護施設から受け入れなければいけないということもありません。
ただ、動物を飼おうと思った時、施設からの受け入れも『選択肢の一つ』として忘れないでもらいたい。ペットショップやブリーダーさんに連絡を取る前に保護施設や譲渡会にぜひ実際に足を運んでほしいというのが私の願いです。
保護施設で働く獣医師やスタッフは動物の健康・福祉を第一に考え愛情をもって世話をしています。成犬・成猫の場合は特に、すでに性格が確立しており、自分にぴったりのパートナーが見つかる可能性も大。一つの命を救うだけでなく、運命の出会いがあるかもしれません。
イギリス大手ペット保険、ペットプランのホームページの『Rehome a pet』のページは、多くのレスキューセンターが登録されており、複数の保護施設で新たな飼い主さんを待っている子達の情報が一括検索できます。
私の愛猫ティドルも推定6−7歳の時に飼育放棄されうちの子になりました。ティドルがどんな風に育って、どんな生活をしてきたかほとんど知りません。ですが、『どんな子だったんだろう?』と想像しながら毎日生活するのも楽しいものです。
考え抜いた結果ブリーダーから受け入れたい場合
色々と考えた結果、やはりブリーダーから子犬・子猫を受け入れたいと思ったら、次はいよいよブリーダーに直接連絡を取り、ブリーダー宅へ見学に行くというステップです。後編へ続く。
参考資料・サイト
[…] UKペットライフというサイトによれば、どうやらペット先進国と言われているイギリスでも、消費者が自分自身で優良なブリーダーを見極めなければならないようです。 […]
[…] UKペットライフというサイトによれば、どうやらペット先進国と言われているイギリスでも、消費者が自分自身で優良なブリーダーを見極めなければならないようです。 […]